自ラ然ル / 淡水魚

スズキ目 スズキ亜目 アカメ科・バス科・スズキ科



オオクチバス
オオクチバス Micropterus salmoides salmoides
バス科 オオクチバス属
全長 30〜50cm
地方名 ブラックバス・バス(日本各地)
形態
上あごの後端が眼の後縁の直下よりも後方に達する。背びれの軟条部と棘条部はわずかにつながる。 背びれ棘条部・尻びれ・尾びれの基底はうろこでおおわれていない。側線鱗数は59〜68
分布
日本へは、1925年に箱根の実業家赤星鉄馬氏によって、アメリカ合衆国のオレゴン州から神奈川県芦ノ湖へ移入されたのが最初である。 本亜種はその食性ゆえに芦ノ湖から外部への持ち出しが禁止されたにもかかわらず、近年野放図な放流によって各地へ移植され、 今ではほとんどの日本全国に分布するようになった。
北アメリカ原産で、原産地では地方によってグリーンバスgreen buss、グリーントラウトgreen trout、オスウェゴバスOswego bass、ブラックバスblack bass、ノーザンブラックバス northern black bass、 リンサイドバス linside bassなどと呼ばれ、釣りの世界では最も重要な魚種のひとつである。 自然分布域は、カナダのケベック州南部とオンタリオ州を北限、ミシシッピ渓谷を西限とする北アメリカ南東部である。 しかし、現在では移植の結果、アメリカのほぼ全域のみならず、世界各地に分布するようになった。 アメリカ以外でこれまでに分布の明らかになった国としては、 オーストラリア、フィンランド、スウェーデン、ハンガリー、ソビエト連邦、ドイツ、フランス、イタリア、チェコスロバキア、ベルギー、オランダ、スペイン、イギリス、フィリピン、キューバ、南アフリカ、西カメルーン、ナタール、マダガスカルなどがあげられる。
生活
もともと止水域を好むため、湖沼を主なすみかとするが、河川の下流域の流れのゆるやかなところにもすんでいる。 また、アメリカではかなり塩分の濃い汽水域でしばしば漁獲されるといい、最近日本でも、大阪湾内で本亜種を見たとの情報がある。 今後分布の拡大につれ、各地の汽水域で発見される可能性強い。
春から秋にかけては、水草地帯や障害物のある岸辺近くで活発に餌を求めて動き回り、 水温が10℃前後になる晩秋には深いところへ移動し、厳寒期には沈木その他の障害物の間で群れをなして越冬する。 しかし、春先の水温上昇期には水温8℃くらいでも入れ食い状態で釣れることがある。
産卵期は、北アメリカでは北部で5月上旬〜6月下旬、南部で12月中旬〜4月あるいは5月と地域によってかなりずれがある。 日本では、琵琶湖で5月上旬〜7月上旬、芦ノ湖で5月下旬〜7月上旬であり、6月に盛期となる。 なお産卵期の水温は16〜22℃である。
産卵はまず雄が湖底を掃除し、直径約50cm、深さ15cmくらいの巣をつくることから始まる。 造巣地には、底質が砂、砂利、あるいは礫のところが選ばれ、生息地が泥地の場合には、木の切り株や水草の茎が産卵床として利用されことがある。 巣と巣の間は、ふつう6m以上離れているが、障害物などある場合には近接してつくられることもある。
雄は巣に成熟した雌を導いて卵を産ませる。 雌は、体の大きさにもよるが、ふつう1回に数百粒の卵を産み、その後巣を離れるが、以後数度にわたって産卵を繰り返す。 その際、同じ雄のところへもどってくることもあれば、ほかの雄のところへ行くこともある。 雄は複数の雌を次々と導いて産卵させ、1巣あたりの卵数は数百粒から数万粒ほどにおよぶ。 雄は卵と仔魚を保護し、近づく外敵を追い払う。
卵はふつう7〜10日間で孵化し、孵化後、仔魚は卵黄を吸収するまでの1週間程度を巣の中で過ごす。 その後、巣を離れて群れをなし、雄の保護下で岸辺の水草地帯でプランクトン動物を食って育つ。 体長2〜3cmに成長すると群れを離れて単独生活に入り、徐々に魚食傾向をあらわし、体長5cmを超えるころには完全に魚食性となる。 ただし、プランクトン動物から魚へと食性を転換する時期については、地域ごとに体長が若干異なっている。 琵琶湖では、かなり早い時期から魚食性をあらわし、体長35mm以上ではコイ科魚類やトウヨシノボリの幼魚などを捕食するようになる。 さらに成長するにつれ、魚類ではアユやホンモロコ、ヒガイ、カマツカ、などを、また甲殻類ではスジエビ、テナガエビ、ヌマエなどを捕食するようになる。
一般に本亜種が移植された湖沼では生態系が大きく改変される。 全国の湖沼での調査によれば、本亜種の移植によってエビ類やワカサギ、トウヨシノボリ、モツゴなどが姿を消した水域が多い。 琵琶湖でオオクチバスが発見されたのは1974年のことであるが、現在では従来湖岸に多く生息していたタイリクバラタナゴ、ヤリタナゴ、シロヒレタビラ、イチモンジタナゴなどのタナゴ類をモツゴなどはほとんど完全に姿を消し、 ホンモロコ、トウヨシノボリ、ワタカ、ビワヒガイ、スジエビ、テナガエビなどの減少も著しい。 湖岸でかろうじて姿が見かけられるのはオイカワとカネヒラの2種類ぐらいである。 逆に増加しているものとしてブルーギルがあげられる。 ブルーギルは、湖岸に多数生息しているにもかかわらず、オオクチバスにはそれほど捕食されていないようである。 琵琶湖漁業における最重要魚種であるアユについては、今のところ著しい減少は見られない。 これは、アユの主たる生息域が沖合であるため、オオクチバスの主生息地と重ならないからであると考えられる。
近年、本亜種と亜種関係にあるフロリダバス M.s.floridanus が奈良県池原ダムに移植された。 フロリダバスは側線鱗数が69〜73と多いこと、いっそう大形となることを除いては本亜種に酷似する。 ただし原産地がフロリダ半島であるため、冬に水温の下がる高緯度地域では生息に適さないことが予想される。
利用
俗称のブラックバスという名前からややもすると悪い、暗いイメージがあるが、その肉は白身で、美味である。 しかも、老化を防止するアミノ酸であるタウリンが、淡水魚としてはきわめて多量に含まれている。 芦ノ湖では高級魚として扱われているが、琵琶湖でも学校給食に出されるなど、今後利用増が見込まれている。 ただし、安易な放流は厳に慎みたい。
山と渓谷社 日本の淡水魚 前畑政善 より

齋藤亮直 mail